BGM BGM:jihad (c)kotoko 「マスター」 「……よう幸希、首尾はどうだね」 「全ての任務は完了致しました。どうぞ――メリルお嬢様の、『森羅万象』です」 「おうよ……長い間の『拒絶』、ご苦労だったねえ」 寄りそうメイドの頭を撫で、化学繊維がほくそ笑む。 訝しげな視線に顔をあげ、何でもないよう両手を拡げた。 「ああコレ? だから森羅万象だよ、メリルの。 あの島が消えた瞬間、幸希にね、島に残され飛び散ることを拒絶させ……回収させたのさ」 「……暴走を引き起こす程のマナを浴びた、『森羅万象』 失ったマナを補給するには最良だと思わない?」 表情を映さぬ熊頭。 それ越しでも笑みを浮かべているのが分かる程、大仰な動作。 まるで、万感叶ったかの如く……。 「……おっま、最初からそれ狙いってんなわけ無いじゃーん! 人聞き悪い事言うなよ、副産物副産物。ほっんとオマケみたいなモンだって ……これでようやく、五分ってトコだな」 化学繊維は、思い返すよう空を見上げた。 「ん? ああ、前の島ー……その前の話だ。 エルタで稼いだマナフルに使ってもマイナス突っ込むくらい消耗してさ。 ほら、 話は、少し昔へ遡る。 あの島を巡って、最初の探索。 宿屋での交流が盛んだった時代、ふとした気紛れで起きた小さな決闘。 魔王と神と――1人の、人間。 三人で踊った、優雅な円舞曲。 「いやあ、俺様ってば……あん時、一度殺られてるんだよね」 「はっはっは、参った参った。平然とした振りするのにどれだけ苦労したか。 アイツだけでも庇おうって全能力回したから自分に手、回らなくてさ? 闇に飲まれて消し飛ぶ瞬間に慌ててスペアに切り替えて、何ともないって誤魔化したけど……正直肝が冷えたって。 真っ当な法則で俺様を消滅させるなんて荒技、後にも先にも、アイツにしか出来ないんじゃないかなぁー……」 笑みを喉元より漏らしながら、平然と己が死を語る。 追求は許さない。 言外にそれを語るよう、すぐさま、話題を切り替えた。 「ま、消耗した分はなんとか補給できたし、これでめでたし――」 「――ほら、俺様神位捨てただろ。 これでまあ、下手な事やらかすと影響がー、とかそういうの無いわけ。 祝! 極普通の一般人! やりたい放題し放題Ver2!!」 「要するに、これで俺様は、栗鼠ゲーだけで専念できるって事さ!」 立て続けに、流れるように。 聞かれてもいない事を、べらべらと。 恐らく――その場に誰も居なかったとしても、変わらぬ調子で語らぬだろう。 そう思わせる程、"相手"の存在そのものを気にもせず。 「今回は試みが過ぎだ。急成長ばかりを求めて、足下を見失っていた。 やっぱり忘れちゃあいけないなあ、自分が何を求めているか、何のために成長したいと思ったか。 ああ、お前知らないか。この俺様! クマヘッドのモットーにして終盤叫ぶ決めゼリフ!」 両手を拡げ、大空へ。 まるで太陽へ語るが如く。 「全ては、次の栗鼠ゲーの為に、次の、次の栗鼠ゲーの為に!」 そう、一頻り笑った後……。 視線を戻し、ほんの一瞬俯いた。 「……さぁ、次はどう魅せていただける。ってね、どう魅せてやろうかね?」 「ああ。どうしても、このセリフを、一度でいいから、何処でもいいから組み込みたかったってだけだよ。 別に何でも無い、昔に貰ったフェバコメだよ。ただ嬉しくて忘れられない……それだけだ」 その行動に意味はなく。 その言葉に意味はない。 仮に理由があったとて、それを解する人間がこの世にどれだけ居ることか。 化学繊維は、普段と変わらぬ様子でサムズアップを相手へ向けた。 「さて、次が待っている。そろそろ行こうか、『世界』? ……てかおめー次ミスしたらホントシバくからな、今期ホント致命的だったからお前、マジで、マジで! ていうか来期組むのか知らないけど、俺どうしようかなー、アイツと適当にペアで細々でもいいよなぁー」 「っつーかアイツも呼びたかったんだけどなー。 ほら俺アイツの名前知らんから。一応今は知らないって事になってるから。 ぶっちゃけコミケん時聞き出したけど、書き直すの面倒だし知らないって事でいいよね。 やれやれ、大人しくビニール被ってろって話だよなあハッハッハ、ハーッハッハ!」 化学繊維、世界の権化、蒼き存在に未だ見ぬ誰か。 己が子達に直接手を下す者達に、終わりの刻など訪れない――。 「行こうぜ……きっと俺達の舞台は、いつまでもいつまでも終わらない。 次は何ができるのか……今からワクワクが止まらねぇや!」 宴はいつまでも、いつまでも。 終わりを告げず廻り続けて……。 |